新世代内視鏡システムを用いた
大腸病変検出能に関するランダム化比較試験(J- FUSE STUDY)
工藤 豊樹
新世代内視鏡システム(330°広視野角内視鏡:FUSE)を用いた大腸病変検出能に関するランダム化比較試験(略称:J-FUSE STUDY、研究代表者:工藤進英、研究事務局:昭和大学横浜市北部病院 消化器センター)が国内8施設において実施されました。Fuse (Full-spectrum endoscopy)システムの特徴は、スコープ先端部前方のCCDレンズに加えて左右両側面にも1つずつCCDレンズが装備されることで内視鏡視野角の大幅な向上が実現可能となったいわば次世代型の内視鏡システムです。従来型の大腸内視鏡では最大視野角170°であるため大腸の襞裏などが死角となり病変の見逃し等が問題なっていました。このFuseの登場によって視野角がおよそ倍である330°での内視鏡観察が可能となり、海外の先行研究においてはadenoma miss rate(AMR)が従来型内視鏡と比較し有意に減少したと報告されています。また同研究におけるback-to-back比較試験においてはFuseによるadenoma発見の上乗せ率が69%も上昇したとの報告もあり、前処置や観察が優れているとされる本邦においても同様の結果が出るのか、その研究結果に期待が寄せられました。
本研究における最終結果では総勢344名の被験者の登録が行われ、主要評価項目であるadenoma miss rate per patient(AMR-PP)が従来群で22.9%であったのに対しFUSE群で11.7%と、有意にFUSE群で低値でした。特に臨床的特徴としては5mm以下の病変と上行結腸部においてFUSE群で有意にAMR-PPが低値という結果が得られました。またadenomaの発見率でも(厳密な意味でのADR ではないですが)FUSE群で有意に高値であったことなどからも、本研究からFUSEの病変発見能でその有用性が示されました。しかしながら盲腸までの挿入時間では従来群と比べてFUSE群で有意に時間を要する結果となり、スコープ操作能の劣性がFUSE最大のlimitationであることが明らかになりました。
本研究の成果はアメリカの内視鏡学会誌に報告されています(Kudo T, et al. New-generation full-spectrum endoscopy versus standard forward-viewing colonoscopy: a multicenter, randomized, tandem colonoscopy trial (J-FUSE Study). GIE 2018;88:854-64.)。本邦における研究結果が、今後の広角内視鏡分野の発展のためのひとつの足掛かりとなることを研究事務局として切に願っています。