研究Front Line

最先端の臨床研究

SSA/P関連腫瘍のEndocytoscopy診断についての検討

小川 悠史

大腸鋸歯状病変は,過形成ポリープ(HP),traditional serrated adenoma(TSA),sessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)に分類される。近年の大腸癌の遺伝子解析から鋸歯状病変由来の癌化症例が最大で20~30%との報告もあり,SSA/PやTSAはmalignant potentialを有する病変として臨床的にも無視できない存在である.2019年にWHO 5th Editionに改定される際にSSA/PはSessile serrated lesion(SSL)に名称が変更されるとともに病理診断基準も変更となり臨床現場では混乱が生じている。

大腸鋸歯状腫瘍、特にSSA/Pの内視鏡診断については,拡大観察(色素・IEE)・超拡大観察(Endocytoscopy: EC)の有用性が報告されているが、症例数が少ないこともあり,SSA/Pに合併したcytological dysplasia(SSA/P-CD)や粘膜下層浸潤癌(SSA/P-Ca)など、SSL関連腫瘍に対する内視鏡診断能はまだまだ十分とは言えない.

2010年1月から2019年12月までに当院でEC観察後に切除されたSSA/P 174病変, SSA/P-CD 15病変, SSA/P-Ca 3病変を対象に内視鏡所見について検討を行った。

内視鏡所見として、SSA/P-CDでは病変内に発赤(60%)や辺縁隆起(67%)を認めた。SSA/P-Caでは全例に陥凹形成(3/3)を認めた。

EC観察ではSSA/P-CDでは SSA/Pを示唆するEC1b(oval lumen)に加えて、腺腫に相当する紡錘形の核およびスリット状や鋸歯状構造を伴う腺腔を認め(12/15, 80%)、SSL+Caでは癌部に一致し不整形・腫大した核の所見を認めた(3/3, 100%)。

以上から鋸歯状病変を疑う所見加え病変内に腺腫や癌相当の腺腔及び核の所見を認めた場合、感度 94.4%, 特異度 98.9%, 正診率 98.4%であった。

EC観察がSSA/P関連腫瘍の診断に有用であることが示唆された。

今後の展望として、陥凹型早期大腸癌の遺伝子プロファイル解析の研究とともに、既に採取したSSA/P+Ca3例の DNA/RNA シーケンスを行い ゲノムレベルでの解析も合わせて行っていく。

一覧へ戻る

PageTop