研究Front Line

最先端の臨床研究

Endocytoscopyと分化度診断

若村 邦彦

超拡大内視鏡(Endocytoscopy:EC)は生体内で400倍の拡大観察を可能とした次世代の内視鏡である。ECは構造異型に加えて核異型まで描出することができ、in vivoで生きた細胞を観察するoptical biopsyを可能とした。現在、当センターではECに関するさまざまな研究が行われ、多数の報告を世界に向けて発表している。

ECに関する研究の一つに大腸癌の分化度診断が挙げられる。これは、ECが病理と類似した画像を描出できるという特徴を生かして、大腸癌の分化度診断が可能であるかを検討するという研究である。EC観察後に切除された早期大腸癌を対象として、ECで得られた核と腺腔の所見と切除標本の表層の病理所見を比較する。現在は高分化腺癌に対する中分化腺癌の診断能を検討しており、その結果、病理組織における中分化腺癌の特徴であるcribriformはECでも観察することができる可能性が示唆された。さらに、この特徴を有する病変では粘膜下層深部浸潤、脈管侵襲、Buddingの陽性率が有意に高値であることが示され、より悪性度の高い早期大腸癌を治療前に推測することも可能と考える。内視鏡観察時に癌表層の分化度を診断することで、リンパ節転の予後因子をその場で評価可能となる。今後さらに症例を重ねて、ECによる分化度診断の精度を上げていきたい。

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