陥凹型大腸癌における発癌機序の解明
神山 勇太/望月 健一/小川 悠史/加藤 一樹/工藤 孝毅
九州大学別府病院外科 三森功士教授の研究室と共同で「陥凹型大腸癌における発癌機序の解明」をテーマに研究を進めている。
大腸癌の発癌経路については、adenoma-carcinoma sequenceが支持されてきた。一方、正常粘膜から腺腫を介さずに直接癌化するde novo 癌の存在が報告され、内視鏡診断学や病理学の立場から、陥凹型大腸癌(0-Ⅱc病変)がそのde novo 癌であると考えられている。
現在までに、陥凹型早期癌19例および隆起型早期癌8例のWhole Exome sequenceおよびRNA sequenceを施行し、比較検討した。陥凹型大腸癌ではadenoma-carcinoma sequenceで重要なKRAS変異を認めず、また、陥凹型大腸癌では染色体のコピー数増幅が強く、adenoma-carcinoma sequenceとは異なる発癌の過程を経ている可能性が示唆された。さらに、陥凹型大腸癌において、癌の転移の原因となるEpithelial Mesenchymal transition (EMT)、血管新生経路のpathwayの遺伝子発現が上昇しており、遺伝子学的にも悪性度の高さが示された。Clinical and Translational Gastroenterologyに論文投稿し、アクセプトされた。
染色体コピー数変化が陥凹型大腸癌において重要なドライバーとして機能している可能性が高く、現在、望月先生がメインでWhole Genome sequenceを行い、検証をしている。陥凹型大腸癌の悪性度の高さ、浸潤に寄与する遺伝子学的特徴が明らかにできればと考えている。